I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2015/01/17 / 08:22

気が付けば、1月も既に半ばを過ぎてしまった。

ついこの間まで「メリクリ!」と言っていたのが嘘のようであるが、こっちはそんな過去の話に郷愁を抱く暇もなく、明日の日曜日から来週の日曜日まで地方へ出張である。つまり帰ってくるのは25日。もうこれで1年12か月のうち、1か月が終わってしまうことになる。来月の終わりになるともう、「今年の漢字」とか「流行語大賞」が気になりだすんじゃないか・・・とすら思う。

そんな光陰矢の如き日々の中でも、此方はいつもと変わらずボチボチと生きている。

年末に購入した、
矢作俊彦「フィルムノワール 黒色影片」
読了。「刑事 二村」シリーズ、前作「Wrong Boodbye」以来10年ぶりの復活である。江口寿史の描く表紙絵が、またいい雰囲気を演出している。

DSC_0351.jpg DSC_0352.jpg

今回の内容は、大物美人女優からの依頼で、撮影はされたものの或る事情から「お蔵入り」になってしまった失われた映画フィルムの探索行。舞台となっているのは横浜、そして香港。21世紀に入ってもう10年以上が経過し、香港も既に中共へ返還されて久しいというのに、未だに赤レンガ倉庫を背景にチンピラのようなバンドが写真を撮ったり、或いは「Gメン75香港スペシャル」で繰り返し登場していた時代のいかがわしい香港の姿が未だに物語の中に息づいている。

それもそのはず。この作品は「日活(無国籍アクション)映画の名場面と名台詞を使い、それらを全部並べて一つの小説を作る。」がコンセプトになっているからだ。

「作品をより深く理解し、楽しむためにある程度以上の知識を要求する作品」というものがある。映画で言えばクエンティン・タランティーノ監督作品がすぐに浮かぶが小説で考えれば、矢作作品はその最右翼に位置付けられるはずである。映画や小説を始めとした広い知識がない人は何を言っているのか全く理解できないであろう比喩表現を始めとして、彼方此方に「罠」が仕掛けられているのは矢作作品の常であるが、今回はそれに加えて日活無国籍アクション映画が主題である。悔しいかな・・・自分はこの手の作品をほとんど見ていない・・・いや、東映の作品と違い日活作品というのは映像ソフトとしても目にする機会が遥かに少なかった、と言うのも原因の一つだろう。それらをリアルタイムで見てきた作者より10年以上若いのだから、仕方あるまい。

であるから本作で登場する「宍戸錠」についても、作者にとっての宍戸錠は「殺し屋・エースのジョー」であるが、俺にとっての宍戸錠は、エドモンド・ハミルトン原作「スターウルフ」ドラマ版における「キャプテン・ジョー」(原作では外人部隊の指揮官ディルロ)なのである。故に本作を読みつつ「あぁ~、これで作者並みに昔の日活映画を見ていれば『此処はこの作品からの引用だ!』と一層、喜びをかみしめながら読むことが出来たであろうことを考えると悔しくて(笑)しかたない。

とは言うものの、そんな「元ネタ」を知らなくとも十二分に楽しめる作品に仕上がっているのでこれまでの矢作作品が好きな人であれば買って損はない。神奈川県警捜査一課を離れ「嘱託」という勤務体系になったことで二村の立ち位置はより、探偵に近づいた。いや警察組織には属していても既に「警察官」では無い(司法警察権を持たない)のだから探偵そのものと言って差し支えない。日本でチャンドラーに憧れる作家は多いのだろうが、チャンドラーに最も近い・・・いや、悪い言い方をすれば「最も模倣が上手く、且つ、それが完全に個性として確立された作家」は矢作俊彦ただひとりなのではないか、と思う。

以前も書いたように、ダシール・ハメットがかつて勤務していたピンカートン探偵社のように、民間の探偵が保安官など、司法警察権を持つ公式の警察官の代行をしていた時代のあるアメリカと、そうでない日本では「私立探偵」という言葉や存在の持つリアリティが全く違うのではないだろうか。それゆえ、日本におけるハードボイルドに関しては「私立探偵」よりも本作や「新宿鮫」のような、警察組織のはぐれ者/一匹狼的変則スタンスの警官の方が、話が進めやすいのは事実だと思う。しかし今回の二村、これまでになく良く動き、派手に暴れる。作品を重ねるごとに探偵自体の個性が次第に透明化していくロス・マクドナルドのリュー・アーチャーとは正反対に、本作でも過剰なまでに存在を誇示し続ける二村(元刑事)・・・さて、次回作があるのなら、どんな形になるのか、今から楽しみである。

加えて、新潮社の小冊子「波」には矢作俊彦&宍戸錠の対談が巻頭に収録されており、此方もおススメである。店頭やウェブ等で見かけたら一冊100円なので是非!

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