I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2014/10/10 / 00:21

「ファム・ファタール」という言葉がある。

「運命の女」という意味のフランス語だが、言葉から連想される官能的な女・・・黒皮のロングコートの下は全裸の杉本彩・・・・みたいな女など映画の中でしかお目にかかることはないだろう。現実世界に目をやれば、青森の公務員に14億を超える金を横領させたチリ人妻アニータ・アルバラードも、尼崎連続殺人死体遺棄事件の被疑者 角田美代子も、連中と動線が交差した男にとっては立派な「ファム・ファタール」だ。

もうかなり前になるが、

カクテル配達
ジェームズ・M・ケイン
「カクテル・ウェイトレス」 「郵便配達は2度ベルを鳴らす」


を読了。

後者はハードボイルド/ミステリ好きであれば知らぬ者はいないであろう名作の新訳版。前者は本邦初訳の遺作。まさか21世紀になって、それも「翻訳ミステリが圧倒的に売れない」という嘆き声が聞こえて久しい昨今にあって「新作」が翻訳されようなどとは夢にも思っていなかったので嬉しい驚きだ。

さてこの2冊。どちらも「ファム・ファタール」的な役回りの女が鍵となっている。「カクテル・・・」では夫に先立たれ(当然、殺しの疑いが掛かっている)子供を1人抱えて怪しげな飲み屋で働く若い未亡人であり、後者は田舎から都会に出てきたはいいが夢破れ、好きなわけでもないギリシャ男と家庭を持ち、安食堂の女将に収まっている「美人ではないが豊満な」女である。

女がいれば当然、言い寄る男もいるわけで前者はとんでもなく金持ちの老人と貧乏だが野心家の若者の2人、後者は幾つも前科のある風来坊・・・と言えば聞こえはいいが、要するに「住所不定無職」の男。そして当然、前者に絡む男2名はあの世に行き、後者では2人で共同してギリシャ野郎をぶっ殺したはいいが、結局、その後の彼是で男が生き残り女があの世へ行く。別に複雑なプロットがあるわけでも驚きのどんでん返しがあるわけでもない、悪い言いかたをすれば、「ありふれた脳足りん女と脳足りん男のチンチンカモカモ」である。知的な要素は、何も無い。

しかしケインの作品が時を超えて読み継がれ、特に「郵便配達」が7回映画化され、6回邦訳が出版されているという事実は何を意味するのだろう。それは「ありふれた日常」の中で「ごくごく普通の人達」がちょっとした運命の悪戯で道を踏み外す怖さ・・・美男美女が出てくる物語でないだけに「生活環境が違っていれば俺も」という思いが一瞬、誰の頭にも浮かぶからだろう。

前出のアニータにしても角田美代子にしても「なんで、あんなブサイクな女/クソババァに引っ掛かって人生滅茶苦茶になるんだ」とTVを見ながら思う。しかし、実際、あの時、あの場所でこいつらに出会っていたら俺も同じ道を歩まないという保証はどこにもない。北九州の「消された一家」事件でもそうだが、まともに考えれば絶対にありえないような成り行きで人は破滅していく。そんな「もしも」を生々しく見せてくれるからこそ、ケインの小説は21世紀の現代でも人の心に棘を刺すのだろう。

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