I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2014/09/13 / 01:36

現実社会で起きる事件は、小説のような複雑な「プロット」など無いことが大半である。

例えば、ロス・マクドナルドが描く「家庭の悲劇」や、チャンドラー作品のように複雑で入り組んだ人間関係、事件背景といったものは現実社会ではまず、存在しない。マクベインの「87分署」が面白い理由は、実際に警察が行っている聞き込みによる裏取りや証拠固めといった手法と「シンプルなプロット」にあるのではないか、と思う。そう考えるとハードボイルドの始祖たるダシール・ハメットの作品もプロットに関してはシンプルだったりするわけだ。

そんなわけで、

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ダニエル・フリードマン「もう年はとれない」

読了。

主人公は、かつてメンフィス警察において「ダーティ・ハリー」や「マイク・ハマー」ばりの荒っぽい捜査手法で被疑者を10人以上あの世に送ってきた「伝説の名刑事」バック・シャッツ。ユダヤ人。現在は御年87才(作中で88才になる)の「超」後期高齢者。

話はシャッツが戦友の死を看取りに行った際、かつてナチの収容所で彼らを虐待したナチ野郎・・・戦争で死んだと思われていた憎きナチ野郎が生きている、それも逃走の際に金塊を持ち出したらしい、という話を聞かされ初めは全く乗り気でなかったシャッツだが、戦友は金塊のことをシャッツ以外の人間にも話しており、周辺がにわかにきな臭くなってくる。そこで殺人事件が起こり・・・・というあらすじ。

既に警察を辞めて数十年。認知症の初期症状か時々記憶があやふやになってしまうため常に「記録帳」を持ち歩き、パンチを繰り出そうにもヨボヨボでどうしようもない老齢になりながらも、ラッキーストライクを所構わず吸いまくり、私物の357マグナムを持ち歩き、下品で強烈な皮肉を吐きまくる(イズ・コック・・・ユダヤちんぽ、には笑った)シャッツと、彼を手助けするNY大学に在籍する孫のテキーラが次第に事件の核心に迫っていく姿・・・というか事件の方から彼らに近寄ってくるわけだが・・・はかなり面白い。

実質、関係者数人から話を聞く以外、捜査らしいことは何一つやっちゃいないのだが(当然、もうバッジを持っていないシャッツは「一市民」でしかない)、明らかに違法な且つ強引な手法は、冒頭に書いたハリー・キャラハンやマイク・ハマーが現代に甦って来たかのようで実に楽しい。

ハッキリ言って、誰が被疑者であるかは半分まで読まずとも見えてくるし、クライマックスのシーンも簡単に予想はつく。冒頭に書いた通り、プロットがシンプルなので登場人物を消去法で消していってもいい。しかしそんなことは関係なく、面白い。老齢をもともせず毒を吐きまくるシャッツの姿にネルソン・デミルでなくとも「87歳になったらバック・シャッツのようでありたい」と思うだろう。また、妻であるローズと互いに寄り添うように生きている心温まる描写も花を添えている。

アメリカでは続刊が出ているそうだが、ぜひ日本でも訳出していただきたいものである。

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