I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2014/09/08 / 20:14

ハッキリ言って、村上春樹なんて全く興味がない。

作品自体も、翻訳作品もどうでもいい。しかし、チャンドラー「大いなる眠り」は創元の旧版が出てからかなりの時が経過していることもあり、「通過儀礼として」再読した。自分は、巷で最高傑作とされているらしい「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」より「大いなる眠り」の方が断然好きなのだな、と改めて思った。

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その余波で・・・かどうかは知らないが、約10年ぶりで矢作俊彦「ロング・グッドバイ」を文庫で再読した。

10年ぶり、というのは単行本が出た直後に買って読み、それからきっかり10年目、という意味である。矢作俊彦の作品は「マンハッタン・オプ」のころから好きなのだが、特に「警部・二村」シリーズが好きなのは、横浜、横須賀、鎌倉といった神奈川の細かい情景描写が懐かしいから、という理由が大きい。その土地のことを知っていると、面白さが倍加する作品、というのがある。小説でいえば森見登美彦作品における京都だし、音楽でいえば、クレイジー・ケン・バンドの横浜だったりするのだが、矢作作品もまさにそれ。神奈川住まいが長い人なら「おお!」と思う描写が其処此処に顔を出す。

話の内容は・・・・チャンドラー「長いお別れ」と大筋で同じ。しかし、パクリにならず見事な矢作節になってしまうのが作者の力量か。当然、ビリー・ルゥが生きて戻ってくることが分かって此方も読んでいるのだが、彼自身にどのような過去があり、それが関係者とどう絡むのか、ベトナム戦争、日米関係、在日米軍・・・・基地の街、横須賀だからこそ、この作品は作品として成立しえたのではないだろうか。そういう意味で、すでに最後の米軍施設(軍属向けのアイスクリーム工場)が1982年に返還されて以来、ノースピアを除けばアメリカの影響が消えてしまった横浜より、現在の横須賀のほうが「ハードボイルドの似合う街」なのだと思う・・・もっとも最近は米軍も羽振りが良くないらしく、横須賀はもとより、座間、厚木(大和)、相模原においても以前と比べて街の中で米兵や軍属の姿を見る機会は激減したが。そしてチャンドラー・オマージュでありながら最後でスピレーン(マイク・ハマー)な一言を持ってくるあたり、スピレーン大好きな自分にはうれしいプレゼントだった。

というわけで本作、ある意味、二村たち人間より、主役は「基地の街・横須賀」なのだと思う。エド・マクベインの「87分署シリーズ」が刑事を主役としつつ「本当の主人公は『アイソラ』という街自体である」と言われるのと同様に。読み終えると、きっとヤマトの靴磨き屋を、由の店を探して汐入のショッパーズプラザ(ダイエー)やどぶ板通りを歩いてみたくなるに違いない。当然、BGMはクレイジー・ケン・バンドで。

最後に、おかしいところを何点か。
先ず、二村が発射してしまった拳銃弾をヤマトから闇で仕入れてレンコンに戻し、署に戻す場面。弾底部には「ロット番号」が刻印されており、拳銃や弾薬を所持している職場はこれらを記録して出し入れを管理している筈なので、1発だけ違うロット番号の拳銃弾があればすぐ、撃ったか売ったか持ち出したかバレてしまう。

あと米軍犯罪捜査部の呼称は「NISO(ニソー)」ではなく「NCIS」である。また作中で書かれているように「NISOは米軍犯罪捜査部CIDの傘下組織」ではなく、逆。つまり組織上はNCISの傘下にCIDが含まれる形になっている。

このくらいだろうかね。

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