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ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2014/09/02 / 22:49

此処2週間余り、掛かりっきりで読んでいた

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サー・ウォルター・スコット「アイヴァンホー」上下巻

漸く読了。

初めて読んだのは大学生の頃・・・だと思うが、ここ数年来、再読したい熱が高まっていた。しかし新刊は生憎の品切れ。かといって実家の「嘆きの壁」(書棚)を発掘作業する気は起きない・・・と思っていた矢先、ついに重版。目出度く手に入れて再読の運びと相成った。

因みに、本書が書かれたのは1820年。日本でいえば文政3年、徳川時代である。そして舞台となっているのは12世紀のイングランド、リチャード獅子心王の治世である。

話の粗筋は・・・ノルマン・コンクェスト期のイングランド。ローマ人がブリテン島を去って以降、隆盛を誇っていたサクソン人は1066年にフランスから侵攻してきたノルマン人の軍門に下って以降、没落の一途をたどっていた。イングランド国内ではノルマン・フレンチが公用語となり、ノルマン人貴族がデカい面をしてのさばり、サクソン人は被征服民として社会の下層に追いやられている、という時代。

そして国王リチャードは第3次十字軍からの帰国途中、神聖ローマ帝国内で囚われの身となり、王が不在間、王弟ジョンがフランス王フィリップと結託し、テンプル騎士団の騎士ギルベールや傭兵の力を以て王位の簒奪を狙っている。

それに対して一足先にエルサレムから戻ったサクソン人騎士アイヴァンホーやサクソン人王国の再興を願う郷士、ロビン・フッドに率いられたシャーウッドの森に住まうアウトローたち、そして謎の黒騎士が立ち向かう、という絢爛豪華な中世騎士物語。

面白かったポイントは以下の つ。

1 ノルマンコンクェスト期、現在のイギリス(や英語)が成立する過渡期である絶妙な時代をうまく切り取っていること。実際、リチャード王の時代に此処までノルマンとサクソンの対立は酷くなかった(と作者も認めている)らしいが、ブリテン島の民族版図を知っておくと何故サッカーなどでイングランド、ウェールズ、スコットランドが対立しているのか等々の理由が見えてくる。

2 前項に付随して、当時の風俗や生活、着衣、或いは騎士が行う槍試合や(今風に言う)バトルロワイヤルな乱戦試合の様子が細かく描かれていること。

3 当時の西欧におけるユダヤ人の位置づけ、つまり「ユダヤ人が如何に(西欧社会で)嫌われているのか」がよくわかること。この作品における「鍵」はユダヤ人金貸しアイザックと娘の美女レベッカなのだが、金に汚いアイザックの描き方はそのまま西欧人のユダヤ人観とつながっているのだろう。これは現代において、彼らが金融や為替等のシステムを開発し資本を操っている、と言われて非難されること以上に宗教が絡んでいることがハッキリ見て取れるから面白い。欧州が完全にキリスト教化され教会の力が強力な時代に「異教徒」である意味、それも独自の選民思想を固持するユダヤ教徒がどのような存在であったか・・・は想像に難くない。

また、自分のような日本人にとって、宗教観というのは非常に希薄だ。ハッキリ言ってキリストだろうがアラーだろうが「八百万いる神様の一人」に過ぎないし、それに優劣をつけようなんてことも一切思わない。故に「異教徒」であるだけでなぜ此処まで迫害を受け、或いは何故キリスト教徒やユダヤ教徒であることだけで他の宗教を信仰している者より優れていると思うのかは全く理解できない。この物語には、そうした中世の宗教観が色濃く残されていることも注目したい。

そんなわけで本作、最近はBBCが制作した原作に忠実なTVシリーズも出ているので興味のある人は(Youtubeで)見て頂戴。ただし、エリザベス・テーラー主演で作られた「黒騎士」というハリウッド映画はアイヴァンホーとは名ばかりの駄作なのであまりお勧めはしない。

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