I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


Entries.

2014/05/11 / 01:29

パンク/ハードコアが好きでCRASSというバンドを全く知らない、という人は居ないだろう。しかしその反面、CRASSがこの日本でどのように受け入れられている/捉えられているか、は全く分からない。何故なら、クラスを「知る」ためには最低でもその歌詞を読まねばならず、英語後進国の日本で彼等の意志が何処まで正確に伝わっているかは甚だ疑問だったからである。

例えばCONFLICTのように、音自体に凄まじい熱量の怒りや闘争心が乗っていて一字一句歌詞を読まずしてもその姿勢が伝わるバンドとは少し違う。下手をするとクラスの「反戦」パッチを縫い付けてはいても歌詞など読んだこと無い、という奴もいるだろう。

というわけで先日、

CRASS no authority but
CRASS "There Is No Authority But Yourself"

を見てきた。

上映時間は約70分と短いが、ペニー・リンボー、ジー・バウチャー、スティーヴ・イグノラントという3者の話を中心とした濃い内容で、色々と考えさせられる内容だった。

先ず思ったのは、非常に醒めた意見だが

「イギリスというスクワット法のような法律があり、田舎にコミューンをつくって自給自足の共同生活をすることが比較的簡単な国で、ダイヤルハウスの広大な敷地と家屋があれば、資本主義や物質主義、社会体制を否定しても生きて行けるだろ」

という事だ。加えてペニーは元々上流階級(アッパー・ミドル)の出身である。今風の言い方をすれば「ダウンシフター」の先駆けと言ってもいい。

それに絡んで面白かったのが「階級」の格差である。スティーヴ・イグノラントはペニーとは違い労働者階級出身である。ペニーの「普通、バンドをやる場合は同じ階級の者同士でやる。私達のように違う階級の者が同じバンドで活動することはまず無い」という発言は自分達日本人には理解しがたい一面がある。そしてクラスをクラスらしくしてたのが歳食ったペニーの達観した視線であり、それと対照的なやんちゃパンク小僧だったスティーヴ・イグノラントの存在だろう。

これがクラス及び周辺環境に独特の化学作用をもたらした。ペニーが「私達がこのような生活を始めれば彼方此方で私達に続く者が出てくると信じていたが、結局、私達だけしかいなかった」という発言はまさにクラス独自の、クラスでしか成し得なかったケミカルが存在した証拠なのではないだろうか。

体制に刃向って作られた共同体やコミューンが崩壊する原因は何だろう。それはジョージ・オーウェル「動物農場」を読めばすぐわかる。体制から外れるために作った共同体の中でルールを決めて行くうち、リーダーシップを取る者と従属する者の身分差が生じ、それが何時しか体制化していくという無限ループに陥るからだ。

ペニーは言う。

「ダイヤルハウスにルールは無い。洗濯についても気付いた者がやればいい」
「私はあらゆる考えの人間を受け入れる」
「私は誰かと(政治的)思想を共有したりはしない」
「此処で生活するなら自分に出来ることをすればいい」
「私は自分の生き方に嘘を吐いた事は無い」

この考え方は、例えば「動物解放!お前等、革ジャン着るな!」であるとか「動物の権利を守るためなら人が死んでも構わない」というミリタントな思想とは対極の位置にあることがお分かり頂けるだろうか。

ある一定の状況下においてルールがなくともトラブルが起きない場合、というのがある。例えば、米軍基地の中には信号が無い。停止線に先に止まった車に優先権がある、という決まりはあるが車の台数が多くなればそんな順番など分からない。あとはお互いにケアしあう「思いやり」に委ねるしかないのだが、交差点事故は起こらない。

これらはつまり「自発的に考えると共に、相手を尊重し、コミュニティの中で自分に出来ることをやる」・・・映画のタイトルにもなっている "There Is No Authority But Yourself" (権威なんか無いんだ。あるのはお前自身。)に繋がってくることがわかるだろう。

パンクやハードコアが好きな事と、左翼/反動思想を支持して政治的な行動をすることは決してイコールではない。今の御時勢、情報は嫌というほど入ってくる。大切なのは自分に都合のいい話も悪い話も全て受け入れた上で、人の受け売りではなく自分で考え、それを自分の言葉で表現することだ。だからこそ人は人として「個」を確立できるのではないだろうか。「権威なんか無い」と言うのは簡単だ。中学生や高校生でも言える。しかしその次の「あるのはお前自身」つまり「個を確立する」のは簡単ではない。

まず「自分で考える」ことから始めようじゃないか。世の中、転載とリツイートで渡って行けるもんじゃない。この映画がそんな切っ掛けになればいいと思う。

スポンサーサイト

映画 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) / PAGETOP

GW継続中 / ホーム / 内側からの廓話 


コメント:


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する 


トラックバック:

ホーム