I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2014/04/09 / 21:23

或る本を読んで、其処に書かれていた内容からまた新しい面白本を見つける、ということが度々ある。そんな一例。

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先日読了した、開高健、谷沢永一、向井敏の鼎談集「書斎のポトフ」の初っ端に収められていた「八丁堀のホームズ・・・捕物帳耽読控」を読んで興味を持ち、都筑道夫「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズ第1巻と第2巻の合本「ちみどろ砂絵/くらやみ砂絵」を買い求めた。これが非常に面白かったので御裾分け。

ちみどろ

この作品、短編集である。

一応「捕物」の名は冠しているが主人公は八丁堀界隈、所謂、岡っ引きとか同心ではなく、貧民窟に住まう非人の一団である。主人公は、色を付けた砂で路上に絵を描き、それによって小銭を稼いでいる。どうやら元は武士だったらしいという事以外、名前も素性も分からない。砂絵の先生なので「センセー」と呼ばれているだけ。

その周りに集う連中も皆、同じ貧民窟の非人である。軽業師「マメゾー」、乞食神官「ガンニン」、乞食歌舞伎役者「オヤマ」、体中に墨を塗りたくった熊の、或いはカッパの変装で芸をやって小銭を稼ぐ「アラクマ」と「カッパ」、幽霊コスプレイヤー「ユータ」、牛頭馬頭の札を売り歩く「テンノー」等、どいつもこいつも実態は乞食である。

それが金の臭いを嗅ぎつけてはセンセーを中心に探偵活動をして下手人を見つけてしまう。おまけに見つけた下手人は正義のために裁くのではなく、金を強請り取って自分達の生活の糧にしてしまう、という展開がとんでもなく面白い。

そして話が進むにつれて次第に、各話の中に江戸の四季や風物詩が詳しく書きこまれるようになると共に、1巻の終わりころから、岡っ引きが解決できそうもないネタを持ち込み、その謎解きをしてやるという形が出来上がり、さらに面白味を増したのも良い。

また、もしこの作品を実写化した場合(十中八九、無理だろうな)、誰をキャスティングするか、を考えてみるのも楽しい。自分が真っ先に浮かんだのはセンセーが高橋英樹、なめくじ長屋の非人連中は全員、たけし軍団でピタッとハマってしまうと思うんだけど(笑)

あとこの作品を読んで思い出したのは、アンドリュー・ヴァクスの「アウトロー探偵バーク」シリーズだ。無免許の探偵バークを中心に、仕事を持ち込んでくる中華料理店の女主人「ママ」、モンゴル人で聾唖の殺し屋「マックス」、ジャンクヤードに住む浮浪者だがとんでもなく知的で博識の「プロフェッサー」、オカマの「ミシェル」といった面々がNYを舞台に自分のコミュニティのために大暴れ(結果として正義の実現にはなるのだが)する設定は、かなり近しいのではないかと思う。

しかしこの「なめくじ長屋」の初出が1968年、バークが世に出る数十年前である。先日このブログで書いた「未来警察殺人課」同様、都筑道夫という作家の感覚が如何に進んでいたか、という証拠だろう。


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