I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


Entries.

2013/12/01 / 09:31

ちょっと真面目な話をしようか。

「売春」は何故、罪になるのだろう。答えは簡単。売春防止法で禁止されているからだ。昭和31年5月31日に施行されたこの法律の第1条にはこう書かれている。

「この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ・・・」

とある。つまり法的な話としては、人身売買や廓等における行動の制限や暴力等の奴隷的扱いに対する人権的配慮を目的として禁止している、というわけだ。では逆に人身売買の対象としてでなく、どんな理由であれ自分の意志で売春をしている人についてはどうだろう。或いは、もし「公娼制度」が昔の電電公社のような国有企業によって実施され、ヤクザ者による搾取や劣悪な勤務環境から解放され、働く人たちが「特別職国家公務員」として売春を生業としていると仮定した場合、「性交の対価として金品を得る」ことの「罪」というのは一体何処にあるのだろう・・・という疑問が湧く。

其処で「売春することにより、例えば会社のOLが手にする平均月給より高額の金を短期間で稼げることから金銭感覚がルーズになり云々」という批判は飽くまでも「売春により因果が疑われる」程度の後付けの話であって、売春でなくとも該当する業種はあるだろう。つまり嫌な言い方をすれば刑法的な意味での「罪」とは人間や社会が後天的に作り出したものであって、人が持って生まれた罪、要するに宗教的な意味での「原罪」とは異なるのではないか。

   DSC_1562.jpg

というわけで中山太郎「売笑三千年史」読了。

文庫で700ページを超える力作であり、売笑とは売春のことである。日本における売春の歴史を国が始まった太古の時代から公娼廃止に至るまで、資料やデータを積み上げて考察した極めて真面目な作品。

自分は以前から、塩見鮮一郎氏の著作を読んで非人と呼ばれる階層の人達が本来は極めて神職に近い位置付けにあり、巫女や白拍子と言った女性たちが売春を行っていたという事は知っていた。本書ではそれを日本各地に残された文章や触書などを根拠として更に明確化すると共に、「初夜権」「一夜妻」「女護ヶ島」といった各地に伝わる伝承や口伝えといった断片的伝聞証拠の考察から、古代から村落や小コミュニティで女性を「共有していた」という日本独自の性道徳観が浮き彫りにしている。つまり貨幣経済が確立し、法秩序が整備される遥か以前から、女性が何某かの対価と引き換えに男性に対して身体を提供するという行為は行われていたのであり、其処に「罪の意識」は見いだせない。

では其処に「罪」を「作り出したもの」は何かと考えれば、それは維新後にドッと流れ込んできた西洋的価値観、つまりキリスト教的道徳観と言ってもいいかもしれない。自分は外国に住んだことが無いので断言はできないが、落語、小説、演劇、歌舞伎・・・と所謂「伝統芸能」において日本ほど廓話の多い国は無いのではないか、と思う。芸者や舞妓にしてもあくまでも娼妓の言い換えであって、それが巨大且つ合法的売春システムであることは誰もが意識している。明治や大正時代に発行された新聞などのゴシップ記事を読むと分かるが、当時は役者の相方、或いは政財界の重鎮達の妾は芸者と相場は決まっていた。それは堅気でない世界の者同士という暗黙の了解があったからに他ならない。つまり日本ほど、所謂「売春」が一般社会に上手く溶け込んでいる国は無いのではないか、という事だ。

もう少し突っ込んだ話をすれば、かつて士農工商の身分制度の中で機能していた「穢多」「非人」或いは弾左衛門という制度が維新後、身分制度の崩壊にと新編に伴い「賤民」という階級差別から「貧民」「浮浪者」という個人差別に態様が変化したように、売春もまた公娼制度の廃止に伴い、非難の矛先も「売春を生業とする個人」に向けられるようなったと考えると辻褄があって来るのではないか、と思う。

人の価値観や道徳というのは時代と共に変わっていく。大切なのは、事実を受け入れる、知覚するという事である。自分は売春という行為について積極的に否定もしなければ肯定もしない。左翼や人権団体のババァ共が口角に唾の泡を溜めて「女性の人権が!!」と叫ぶような事も絶対しない代わり「いやぁ~、もっと風俗産業が活性化することを望みますよ」なんて事も絶対言わない。

大切なのは一個人としてキッチリとコミュニケーションが取れるか、建設的な話が出来るか否かという事であって、それは職業とは関係ないからだ。自分はそういう面において常に意識はフラットで居たいと思っている。まぁ、それも人それぞれの考え方だがね。

というわけで、色々と考えさせられる大変面白い本だった。

スポンサーサイト

書籍 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) / PAGETOP

新規開拓 / ホーム / 京都・晩秋弾丸ツアー


コメント:


コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する 


トラックバック:

ホーム