I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2013/03/28 / 01:17

発売されて2年、購入したまま部屋の隅で積読になって1年。漸く

狼花
  大沢在昌「新宿鮫 Ⅸ 狼花」

を読了。

話の粗筋は・・・

大麻所持で逮捕されたナイジェリア人の取調べにあたった鮫島は麻薬ルートの捜査に乗り出し、盗品を専門に売買する「泥棒市場」の存在を突き止める。この組織の背後には鮫島の宿敵、仙田がいた。一方、鮫島と同期でキャリアの香田は新設の組織犯罪対策部の理事官へ異動。香田は外国人組織の撲滅のため暴力団と手を組むことを画策していた

・・・というもの。

600ページを超える分量、破綻することなく緻密に入り組んだプロット。個性の立った人物描写。圧巻である。これまでシリーズの中で最高傑作は「風化水脈」だと思っていたが本作もそれに並ぶ傑作である。ただし、「新宿鮫」「毒猿」のような読後の爽快感は無いので評価が真っ二つに分かれたという理由もわからないではない。

長期のシリーズにおいて、特にその初期においてセンセーショナル且つ圧倒的な注目を集めた作品が時の流れと共に変わらざるを得ない状況に置かれる、というのは宿命なのかもしれない。ロス・マクドナルド「リュウ・アーチャー」然り、ロバート・B・パーカーの「スペンサー」然り、アンドリュー・ヴァクスの「アウトロー探偵バーク」然りである。それは単純に「主人公が歳を取る」という現実のみならず、それに絡む環境設定や人間関係の変化であり、「現実世界における」世相、或いは犯罪の多様化に負う部分が大きい。

1巻2巻では「個人」を的にかけていた鮫島だが、次第にその対象は巨大化し、今や高度に組織化されたヤクザ及び外国人犯罪組織と勝ち目の殆ど無いに等しい戦いを強いられている。この巻ではその苦闘がこれでもかとばかりに描かれている。本作で香田が暴力団を「利用する」設定は飽くまでもフィクションだが、実際に警察の知人からは「外国人犯罪者が小僧のギャングが跋扈するよりは日本のヤクザ者に盛り場を押さえさせておいた方がいい」という話を聞かされると、あながち夢物語というわけでもないのではないかと思ってしまう。

そんなギリギリの世界で、鮫島も香田も、元公安のテロリストである仙田、稜知会の石崎・・・それぞれが己の信条(理想)を貫くために奔走する。各人の立場や視点が非常にうまく書き分けられており、目まぐるしく変わる場面転換と共に飽きさせない手法は流石である。

其処に中国女の呉明蘭という「不確定要素X」・・・それを愛情と呼ぶか欲望と呼ぶか、利用価値と呼ぶかはさて置き・・・が混じる事により事件の展開と力の相関図が一気に不安定になるのも良い。最終的にこの呉明蘭が半ば「勝ち逃げしたような」したたかさを読者に植え付けてしまうのもミソである。

ラスト展開がやや性急すぎる嫌いはあるものの本作で鮫島と香田、そして仙田との関係にも一応の決着がつけられた。恋人である晶との関係はますます希薄になり、次巻「絆回廊」において遂に・・・・が・・・・してしまうと作者自身、もうそろそろこのシリーズの「落としどころ」を決めているのではないか、と思のだが、それはまた先のお話。

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