I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2013/01/30 / 21:25

映画のレヴューを読んで見に行きたいと思っていたものの、仕事の都合だの日程だの諸々重なって見に行けず仕舞いだった「第9軍団のワシ」の原作、

      eagle of the 9th
ローズマリー・サトクリフ「第9軍団のワシ」

読了。

話の粗筋は

・・・ローマ軍団の百人隊長マーカスは,ブリトン人との戦闘で戦車の下じきになり,栄光あるローマ軍人としての生涯を断念した。傷心のマーカスは,かつて父が司令官を務め北方遠征途中に行方不明となっていた第9軍団5000人の消息と軍団と共に失われたローマ軍団の象徴である〈ワシ〉を求めて旅に出る

・・・というもの。

舞台は西暦120年頃のイギリス・・・ブリテン島。ユリウス・カエサルのブリタニア侵攻後、ローマはブリトン人(ケルト人)諸部族を平定しブリテン島を属州化。しかしローマの実権支配が及んでいるのは南部のみ。北部はハドリアヌス長城の建設を見てもわかる通りケルト系諸部族の反乱が、そして東側の海からはサクソン人が侵攻を図っている時代である。

ローマのブリタニア及びガリアでの戦争の記録はカエサルの「ガリア戦記」に詳しく記載されているが、本書はそんな時代背景を基に、負傷除隊により軍団将校としての道を断たれた青年の挫折と再生、第9軍団と共に消えた父の汚名をそそぐ家族の物語、そしてかつては剣闘士であり奴隷であったブリトン人エスカとの友情を見事な筆致で描き上げた歴史小説の傑作である。

因みに本書は「児童文学」の括りではあるが、その内容は大人が読んでも十分すぎるくらい満足できるものである。この時代の欧州の歴史の興味のある人であればハマる可能性はかなり高いのではなかろうか、と思う。デーン人がブリテン島に王朝を築いたクヌート大王の時代を背景とした漫画「ヴィンランド・サガ」で歴史に興味を持った人やアーサー王伝説が好きな人にもお勧めである。また自分のように「コナン・ザ・バーバリアン」「ブラン・マク・モーン」といったR.E.ハワード作品が好きな人間にとっては「ピクト人」という部族名が出てきただけで反応してしまう。

個人的には、危険を犯し北方のケルト人部族で「神」として崇められていた破損した「ワシ」を不自由な体でありながら部族の追撃を振り切って持ち帰ろうとするマーカスの信念・・・それは父の最後を「看取る」意味でもあり、かつては夢を託し、志半ばにそれを断念せざるを得なかったローマ軍団に対する自らの「幕引き」の意味でもあるのだろう・・・に惹かれると共に、かつてはマーカスの奴隷でありながら、自由の身となった後も常に半歩引いた位置からマーカスを支えるエスカとの友情にも心を動かされた。故に、旅(そして「狩り」)が終わった後、マーカスがブリテンに残るのは必然だったのだ。

本書を通じ、サトクリフという作家を知ることが出来てとても嬉しい。良い本との出会いは人生を豊かにしてくれる。そんな言葉が今更のように心中に去来する。

以下は映画版「第9軍団のワシ」予告編。

原作と映画は違うもの、ということは承知の上だが此方も機会があれば見てみたいものである。





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