I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2012/12/25 / 02:30

クリスマスなので、こころが温かくなるような本を御裾分け。
 
   ゆめの
    夢野久作「猟奇歌」

本棚に並べておくための、或いは人と話していて「読んだ」と言っておけば取り敢えず「バカじゃないな、と思ってもらえそうな本」という困ったブツが世の中にはある。

ニーチェ「ツァラトゥストラ」であったり、ミルトン「失楽園」であったり或いはフロイト「精神分析入門」であったりするわけだが、ミステリのジャンルにおいてその頂点に君臨し続けるのは間違いなく「ドグラ・マグラ」であろう。

バカの一つ覚えのように小栗虫太郎の国士舘・・・もとい「黒死館殺人事件」と並ぶ奇書であり「一旦ページを開いたら最後、精神の迷宮がどーのこーの」と言われるアレだ。しかし、そう言う人間のうちどのくらいの割合が「精神の迷宮」とやらを理解しているのだろうか、と思う。「気持ちが落ち込んでいる時にBURZUM "Filosofem" を聴くと死にたくなる」というのと同様、本当にくだらない。「人がそう言ってるから」それが意識下に刷り込まれていたに過ぎず、結局のところ誰かの受け売り以外の何者でもない。

勿論、自分だって「ドグラ・マグラ」くらいは読んでいる。しかし別段、心を動かされたわけでも迷宮とやらに捉われたわけでもなんでもない。「あー、キチガイが書いたキチガイの話だな」程度にしか思わなかった。

まぁ学生時代から

「でもさ、それって要するに『ニーチェ読んでる俺ってアタマ良いだろ?』ってチンケな自己主張なんだろ?(笑)」

と知人に言って思いっきり嫌な顔をされるような性格の悪い人間なので基本的に世間様の評価なんてものはどうでもいい。自分が面白いか、面白くないか、というだけの話。

そんなわけで、長々とした前口上を終えて漸く本題。

本書、夢野久作が詠んだ短歌を赤澤ムックさんという方が選別、編集したものである。

昔、これと同じような本を読んだことがある。ex. BLACK FLAG のVo.である Henry Rollins の著書 "1000 Ways To Die" である。極限まで削ぎ落としたシンプルな言葉で綴られる死の物語。鍛え上げられた肉体と圧倒的なパワーとパフォーマンスで知られるロリンズがその獣のような見てくれとは裏腹に内側に捻じれた歌詞を書いているのは周知の事実であるが、改めてその根源が紙媒体に印刷されると全く異なる感覚で自分に迫ってくることに気付く。

本書に掬い上げられた「歌」の数々。猟奇、厭世、絶望、虚無、怨嗟、加虐嗜虐衝動・・・どれも暗く、そしてネガティヴな要素である・・・が、これらはロリンズの著書や歌詞同様、ふとした時に、自分の心に浮かんで消える「一瞬の魔」を切り取ったものだ、と気付く。

ブコウスキーの作品を読んで「でも、そんな風に考えてるのはお前だけじゃないよ、ブコウスキー」と変なシンパシーを感じるのとは真逆の感情。

「誰か一人 殺してみたいと思ふ時 君ひとりかい・・・ と友達がくる」
「何遍も自殺し損ねて生きている 助けた奴が 皆笑ってゐる」
「タッタ一つ 罪悪を知らぬ瞳があった 残虐不倫な狂女の瞳だった」


等々。

時に自虐的、時に虚無的でありながらギラリとした魔と知性が宿る言葉の数々。何処となくPOISON IDEA の歌詞、例えば

「死の夢を見ると必ずお前が出て来る」
「俺の敵が眼前を歩いている 味方は俺の背後を歩いている 死は俺の横を歩いている」


といった感覚に近しいのではないか、とも考える。

何れにせよ、まだまだ暗くて寒い冬の夜、自分の心に宿る「魔」と対峙してみるのも乙なものかもしれない。その鏡には本書をどうぞ。

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