I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2012/11/14 / 00:31

一般に「ハードボイルド物」と言われる小説は大好きだが、再読したくなるブツには殆どお目に掛からない。これまで再読した作品は、ミッキー・スピレイン「裁くのは俺だ」、そしてハメットの作品だけである。

そんなわけで、

    4334752101 (1)
    ダシール・ハメット「ガラスの鍵」

読了。

自分はつい最近までこの作品の新訳版が出版されていたことを全く知らなかった。

本書については既に、創元推理文庫版(大久保康雄 訳)とハヤカワ文庫版(小鷹信光 訳)の2種類の翻訳で読んでいたが、今回の訳本が一番、読みやすかった。アマゾンのレヴューを見ると「読みやすくて戸惑う」だの「非情さに欠ける」だのという意見が挙げられているが、偉そうな事を言う割にお前等、原書を精読出来ないんだろ、と思う。

今回の訳本で主人公の名前は「ネッド・ボーモント」と書かれているが、ハヤカワ版で翻訳を担当された小鷹さんも「Ned Beaumontの "t" は完全なサイレントと断言できない。」と書いているわけで「ボーモント」という訳だってありなのだと思う。「ノー・カントリー」に出て来る殺し屋の名を「アントン・シュガー」とするか「アントン・シガー」とするかの違いと同じで、元々言語体系の違う言葉を正確に訳すことは困難を極める。結局、そういうところに噛みつく連中は、ハードボイルドは「文学的で読みにくい訳文」でなければならず、「その文体に浸れる俺って知的」とでも思っているのだろう。

というわけで、本書。

粗筋は・・・

賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕・マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す

・・・というもの。

簡単に言えば、政治家を巻き込んで利権の拡大を図るヤクザ者の相棒である博徒の話である。腕力と拳銃にモノを言わせるタフガイ探偵でもなんでもない、敵対する組織に捕まってタコ殴りされた上、自殺まで図ってしまう男が主人公である。共感できる部分など、殆ど無い。ただこのボーモントというヤツ、非常に知的且つ冷徹である。その知力を武器に真相に迫っていく根性は称賛に値する。

自分がハメットの作品に惹かれる理由は、コンティネンタル・オプにしろ、サム・スペードにしろ、ネッド・ボーモントにしろ一応の職業的倫理観は持っているものの、基本的には自分のエゴと損得勘定で動く事を露骨に示している点である。スペードは映画版のハンフリー・ボガートが余りにカッコ良すぎるせいか良いイメージで語られることが多いが、原作を読んでみればかなり下卑た利己的な男だということが分かる筈。

ボーモントにしても例え家族ぐるみの付き合いをしている親友のマドヴィッグであろうと、己の意志と行動規範から外れた行いをすれば容赦なく切って捨てるところも凄く良い。

フィリップ・マーロウのように2度か3度、酒を酌み交わしただけの男を「親友」呼ばわりして、自分の思い込みでしかない「友情」とやらのために行動するような気取った奴とは次元を異にするギラギラした人間の本性が、感情を排した文体で淡々と綴られている。だからこそ、堪らなく面白い。

チャンドラーの「卑しい街を行く騎士」たる私立探偵なんかクソ食らえ、と思う。マイク・ハマーもハメットの主人公たちも「己のエゴ」に正直に生きているからこそ魅力なのだ。だから時として、無性に読み返したくなる。初手から、解説にあるように「ボーモントが口髭を親指の爪で梳く仕草の違い」が心理描写に繋がっている、という小難しい事は考えなくともいい。純粋に、物語を楽しめばいいのだと思う。

因みに本作を映画化した場合、ネッド・ボーモント役はジョニー・デップ以外思いつかないのだけど・・・どうだろう。マドヴィッグは昔だったらロバート・レッドフォードと答えただろうが、レッドフォードはウェストレイク(リチャード・スターク)の「ドートマンダー」だからな・・・現代で探すと、誰がいいかね。ブラッド・ピット・・・うん、いいけど・・・定番すぎてねぇ・・・

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