I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2012/10/19 / 01:13

昨今は時代小説ばかり読んでいたので気分転換にSF小説を手に取る。

      アンドロ夢羊
  ジョン・スコルジー「アンドロイドの夢の羊」

原題は "Android's Dream" である。わざわざフィリップ・K・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」に引掛けようとするから「こなれていない」変な日本語になるんじゃないか、と思いつつもページをめくる。

話の粗筋は・・・・

地球‐ニドゥ族の貿易交渉の席上で事件がおきた。戦争につながりかねないこの問題の解決のため、ニドゥ族は代償として特別なある「羊」の調達を要求してくる。期限は一週間。凄腕ハッカーの元兵士クリークがこの羊探しを命じられるが、謎の宗教団体に追われ、反ニドゥ勢力の暗殺者に狙われるはめに。そして、ようやく見つけ出した羊の正体とは……。〈老人と宇宙〉シリーズ著者がP・K・ディックに捧げた冒険活劇SF

・・・というもの。

「ブレードランナー」あり「ヴェニスの商人」あり「MIB」あり「攻殻機動隊」あり・・・の活劇である。何度も書いているが、どれもこれも手垢の染み付いた御馴染みのガジェットであり新鮮味は無い。しかし、非常に面白い。素早い場面展開、敵味方裏切者入り乱れたのキャラ造りの上手さ、「おっ!此処でこのネタ持ってくるの!」という匙加減。御馴染みのガジェットであっても使う場所によって効果の度合いが格段に違うという良い例。

そして其処此処で噴出するSFにあって非常に珍しく、且つ知的でヒネリの効いたユーモア。「老人と宇宙」でもそうだったがこの作者の(ある意味ブラックな)ギャグ・センスは自分のツボを突きまくり、思わず破顔したこと数度。これだけでも読む価値がある。

例えば・・・ちょっと長くなるが引用・・・・

ポープの見たところ、ニドゥ族はそのカーストや地位や階級に対するこだわりにもかかわらず、巨大な大銀河連邦の食物連鎖においては深海生物でしかない。大銀河連邦が国連だとすれば、ニドゥ族はブルキナファソのようなものだ。慢性的に発展の遅れた大陸にある、ちっぽけな、つまらない小国で、長い一日を土を叩いてすごす以外に何が出来る希望もない。問題は、大銀河連邦ではニドゥ族が最も近い同盟国だということだ・・・・

笑える。いきなりブルキナファソだよ(笑)そしてさらに問題なのは銀河系の序列においても軍備においても地球はニドゥ族より更に下位にあるということだ。かくして、地球人が「ブルキナファソ扱い」している爬虫類のような見てくれの、しかし軍事力では地球に勝るニドゥ族を牽制するため、陰謀の糸は張巡らされるわけだ。

また、臭いを言語として知覚できるニドゥ族を「おなら」を利用した臭い言語発生装置を用い

「あんたは連れ合いに種無しと笑われている」
「あんたの母親は藻とファックする」


と侮辱し続ける場面も秀逸である。

そんなわけで、読書が楽しくなる秋の夜長、払った金の元は十分取れる娯楽作品である。

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