I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2012/09/26 / 02:17

一頃のキチガイじみたような蒸し暑さも一段落し、漸く秋の気配が漂い始めた昨今。秋といえば食欲の秋、であり運動の秋、でありそして読書の秋でもあるわけだ。尤も自分の場合、真夏だろうが真冬だろうが基本的に、何処へ行くにも本は必ず所持しているのだが。

というわけで 

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山本一力「赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え」

読了。

シリーズ2冊目。

前回も書いたが本書、江戸の闇に蠢く「裏稼業」の連中が力を合わせて御定法で裁けない悪に正義の鉄槌を下す、という話ではない。エド・マクベインが「87分署」という警察署の面々を主人公にしつつも実際はNYをモデルにした「アイソラ」と呼ばれる架空の大都市を描くことを目的にしていたのと同様、本書の主役は喜八郎たちが住み暮らす「深川」という街でありコミュニティである。

そしてこれも前回書いたが、池波正太郎が「人間は良い事をしつつ悪いことをする」と書いていたのと同様、前作では喜八郎や米屋政八の前に立ちふさがる強力な「悪役」であった蔵前の札差、伊勢屋にしても商売に関してはとことん強引且つ強欲である反面、実は人情に厚く、そしてシャイな面を併せ持つ粋人である事が随所で語られるにつれ、喜八郎たちと伊勢屋の関係にも微妙な変化が現れてくるのが実に面白い。

当初は伊勢屋から「ただの損料屋風情」の扱いだった喜八郎の力量を見抜いた伊勢屋が次第に扱いを上げてくるのもいい。要するに、此方もただの悪党/強欲商人でなく、人の目利きが出来る男であるという事。そしてラストを飾る「初雪だるま」での粋な計らいは心の中で喝采を叫びたくなってしまう。

昨今はこのような「粋な大人」というものにお目に掛からなくなって久しい。当面の自己保身の事しか考えない小悪党ばかりの現代だからこそ、このような話は余計、心に染みる。

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