I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で


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2011/09/23 / 11:28

当たり前の話だが、言葉ってのは面白いものだな、と思う。特に現在の部署に変わってからというもの展開が全国区になったせいもあり、全国津々浦々の言葉を聞く事が出来るようになった。そんな中で味噌汁のことを「おみおつけ」と言うと通じなかったりするわけで、かなり昔にも書いたとおり「では『標準語』ってのは一体何なのだろう」と考えてしまう。少なくともこの事例を見る限りしばしば聞かれるように「標準語=東京言葉」でないことは明らかだ。

因みに前出「おみおつけ」というのは味噌汁の東京言葉である。うちでは今でも普通に「おみおつけ」と言う。漢字で書くと「御御御付」だ。以前、出張で行った某田舎町の食堂で定食を頼んだ時のこと、厨房から

    「おい、汁まだか?早く出せよ。」

という声が聞こえてきた。大体、自分、或いは人の手でしごくのか、はたまたカテーテルを突っ込むのかは知らないが「汁を出す」なんて表現は下品でいけない。

というわけで、此処数日

       rakugo.jpg

  長井好弘「使ってみたい落語のことば」(中公文庫)

を読んでいた。内容は、タイトルの通り。古典名作落語の中から小粋な言葉を取り上げ、解説している。時として「喧嘩を売られているように」聞こえるらしい東京の言葉だが、実際はそれが「威勢の良さ」の誇示であると同時に「恥ずかしがり屋の照れ隠し」という2面性を持つ、或る種「伝法な社交辞令」であったりするわけだ。

俺自身も人様から

  「早口で何をしゃべってるのかわからない」
  「なんでいつもそんなに話し方が攻撃的なんだ」

と言われたことは何度もあるわけだが、別段、トラブルの種をまいて歩いてるわけではない。当たり前の話だが「バカ」という言葉一つとっても、それが「愛在る『バカ』」と、本当に相手を蔑んで放つ「バカ」とでは全く違う。

そんなわけで本書、古今亭志ん生師匠の名演「火焔太鼓」の一節

  「目をごらんなさい。バカな目をしてるでしょ?
 あの目は『バカメ』といいまして、おつけの実にするよかしょうがないんです」


実にくだらない。

しかし不思議と心に引っ掛かる。「おつけ」というのは先述「おみおつけ」よりも古い言い回しで要するに味噌汁。「するよかしょうがない」なんて言い回しもじつに懐かしい。

目に絡んで「火焔太鼓」からもう一つ。

  「こいつが太鼓を叩いたんです。利口そうな目をしてるでしょ?今年14になるんです」
  「先ほど11と申したではないか!」
  「へぇ。11の時もあったんですな。」

そりゃぁそうだろうよ(笑)あったりめぇじぁねぇか!
当たり前、といえば此方。

  「お互い生まれたときは別々でも死ぬときは別々だって、そういう仲なんですよ」
  「なんだい、そりゃ。当たり前の仲じゃないですか」
  「そうですよ」

昔々、神田の三省堂で店員が

  「今ならこのテレホンカードが1枚500円!2枚で1000円、3枚で1500円と大変お買得になっております!」

と言ってたのと同じノリだ。聞いてる方は「あったりめぇじゃねぇか!」と言いつつもついつい顔がほころんでしまう。

あと秀逸なのは此方、「抜け雀」より

  「おまえの眉(まみえ)の下にピカピカっと光ってるのは何だい?」
  「これは目です」
  「目なら見るためについてるんだろう。
     見てわからんような目なら、くり抜いて あと銀紙でも貼っとけェ!

本書にも解説がある通り、この面白さは「銀紙」以外の代替物が思い浮かばないところだ。「LEDライトでも埋めとけ」じゃ洒落にもならない。言い回しは些か伝法だが、実際はギャグであると同時に説教でもある、という独特の言い回し。こういう表現が様になるのはやはり志ん生師匠ならでは、という部分もあるのだろうが。

因みにうちのオフクロは在りし日の志ん生、文楽、柳橋、正蔵(先代。後の彦六)といった昭和の名人芸を人形町の「末広」で見ていたそうだが、「舞台に出てくるだけで場内の雰囲気がガラリと変わるのは志ん生だけだった」と言っていた。

あと古典落語の東京言葉と言えばやはり啖呵。志ん朝師匠の「大工調べ」で、大工が因業大家に向かって切る啖呵は何時聞いても気持ちがいい。やはり言葉ってのはリズムなのだな、と改めて思う。そしてオフクロがいつも

「幾ら威勢が良くても下品なのは『粋』っていわないんだよ」

と事ある毎に言っていたのを思い出す。

以下、件の「大工調べ」6分50秒あたりからの畳み掛けるような啖呵は本当に惚れ惚れする。埋め込みリンクが貼れないので

アドレスは此方

個人的には、先代・春風亭柳朝師匠の歯切れのいい東京言葉が大好き。


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