I Don't Care About You !

ニヒリズムとナルシズムの狭間で

2012/11/29 / 02:04

子供の頃から所謂「洋食」が大好きだった。

自分の中で一番古い洋食の記憶は、両親に連れられて上野動物園へ行った折に食べた精養軒のグラタンである。故に「洋食」という言葉には何処となく、昔日への郷愁や懐かしさが宿っているように思えてならない。

先週からちまちまと読み進めていた、

  2f5Q8BhL.jpg
 岡田哲「明治洋食事始め とんかつの誕生」

読了。

話の粗筋は

・・・・明治維新は1200年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓60年の疾風怒涛を、豊富な資料をもとに活写する

・・・というもの。

欧米型の食生活が広く受け入れらると共にマクドナルド等のジャンクフードの食べ過ぎで肥満児が増大している現代の日本から考えれば、明治維新まで肉食が禁忌であった事など考えられないかもしれないが、明治生まれの曾祖母は、肉を「四足」と呼んで終生口にしなかった。肉食は、心身が穢れると約1200年に渡り忌み嫌われ極一部の人達しか獣肉を食べなかったなど、にわかには信じられない話かもしれないがそれは紛れもない事実だったのだ。

本書は、維新後、明治天皇自らが肉を食べることで当初は貴族や上流階級の間に広まっていった西洋料理が時の経過と共に和食文化との融合を果たし、その中から庶民の「洋食」が生まれてくる過程を事細かに描いている。表題にもある通り「とんかつ」に対する筆者の熱意、試着がひしひしと伝わってくる。

因みに、これまで自分は「とんかつが嫌いだ」という人には一人も出会ったことが無い。「カレーライスが大嫌いだ」という人は稀にいる、というのにだ。筆者も言うように、自分もとんかつというのはある意味、究極の洋食だと思っている。本来はビーフカットレット/コートレットであった西洋の肉料理を厚い豚ロースを使い衣をつけ油で揚げ、付け合せのキャベツと共にウスターソースをかけ、箸を用いてゴハンと共に食べるというスタイルはまさに和洋折衷の到達点と呼んで差支えないのではなかろうか。

加えて本書では、肉食文化の導入と共にパン食文化がどのように日本の社会に溶け込んでいったかという過程も追っている。此処で「とんかつ」の役を担うのは「あんぱん」である。パンの中にあんこを入れるというこれもある意味、究極の和洋折衷なのだろう。

面白いのは洋食やあんぱん誕生に前後して色々な変わり種の和洋折衷料理が現れたという記述で、トマトシチュー・ミルクライス、サラダ入りおにぎり、ジャム餡モナカ、レモンモナカ、チョコレートおこし等々・・・でも考えてみればこれらは21世紀の現代、既に近いものを食べているのではなかろうか、と思い当たる。スーパーに行けばサラダ巻きという寿司を売っているし、ランチパックのラインナップを見れば「これから先、どんなモノを挟んでくるだろう・・・」という興味は尽きない。

つまり本書で述べられているように、このような雑多な国の料理を味わいつつそれらを日本の食文化と融合させて独自の料理を生み出していくのは日本人ならではの事だと思う。何れにせよ自分は「とんかつ」や「カレーライス」のあるこの国に生まれ育ったことを感謝している。

ただ、最近の洋食について残念な事が一点だけある。それは東京の洋食屋からどんどんウスターソースが消えている事だ。とんかつにしろフライ物にしろ、あつあつの料理と野菜にウスターソースをドバドバッと掛けて食べるのが昔から東京っ子が好んだスタイルではなかったか?故に自分は大学に入るまで「とんかつソース」というものの存在を知らなかった。うちは代々東京っ子だったのでウスターがメインで稀に中濃を使う程度だった。巷では東京の老舗だの池波正太郎の影響か「昔の味」とやらが大層な人気だそうだが、だったら洋食はウスターで食べて頂きたいものだ、と思う。

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2012/11/27 / 00:53

昨日に引き続いてDYSネタ。

以前、Tシャツやサイン入りポスターとのボックスセットで購入した再結成DYSのライヴ・アルバム

DYS MTF
"More Than Fashion"LP

だが折角良い出来なのにLPでは聴きたい時に聴くことが出来ないのでMP3音源でも入手。併せてデジタル配信オンリーの新曲

DYS-Wild-Card-Key-Art.jpg Sounds Of our town

DYS Unloaded DYS brotherhood 2012
"Wild Card"
"Sound Of Our City"
"Unloaded"


も入手。因みに新曲をDLすると洩れなく

"Brotherhood 2012"

のMP3音源も付いてくる。

昨日も書いたようにこれら新曲、従来の(旧来の)DYSファンからは頗る評判が悪い。そりゃあの歴史的名盤 "Brotherhood"LP と比べれば燃えたぎるようなアツさは無いが、前出ライヴ盤、その他にも持っている2011年フィラデルフィアでのライヴ音源を聴く限り、2枚目"Fire & Ice" の曲と併せて演奏すればそれほど大きな違和感はないと感じた。大体だな、2012年の現在に1983年をそのままの形で再現しろと言う方が無理なのだ。

そんなわけで新曲。良い曲である。同時期にリリースされた再結成GANG GREENの新曲の400倍、カッコいい。昔のDYSを知らない人でもDBLのファンであればイケる筈。




因みにレコード化されているのはこのステージ。録音状態は凄く良い。

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2012/11/25 / 23:56

先日、レコード店で見て、

    DBL New CD
  DOWN BY LAW "Champions At Heart"CD

がリリースされているのを知った。

言わずと知れたex. DYS ~DAG NASTY ~ALL というUSパンク/ハードコア史に永遠に刻まれるであろうバンドでフロントマンを務めてきたデイヴ・スモーリー(Vo)が率いるバンドの9年ぶりの新譜である。

自分は前出3バンドは大好きで未だTシャツも着ていたりするのだがDBLに関しては全く入れ込んでいなかった。これまでデイヴが関わってきたバンドの1st はどれも名盤として名高い音源ばかりなのだが、その期待が高かっただけにDBLの1stを聴いた時の中途半端感は相当なものだった。以降、自分の中から完全にDBLは消えていた。

一時的に再結成されたDAG NASTYの音源にしても92年の"Four On The Floor"は良かったものの、2002年の"Minority Of One" は全くダメだった(あくまでも個人的にだが)。故に今回は買うのを躊躇した・・・が、聞いてビックリ、素晴らしい内容だった。

1st以外のアルバムを聴いていないので飽くまでも個人の勝手な思い込みなのだけど、再結成DYSをやった事でまた魂にギアが入ったのかな、と考えたりもする。DYSのステージで「老若男女や時代に関係なくハードコアやパンクのスピリットは伝わっていく」と話していたようにデイヴ自身、ルーツとしてのパンク、ハードコアを再発見したのかもしれない。

そして、DYS名義でデジタル配信された新曲"Wild Card" "Sounds Of This Town" は旧来のDYSファンからはすこぶる評判が悪かった(笑)が「DBL名義でもイケるじゃないか」と思っていた矢先の新譜なので自分の意識としても良いタイミングだったのではないだろうか。

曲が良いのは当たり前なのだろうけど、R&R風味が無理なく織り込まれ伸び伸びとしたギタープレイや時にアツく、時にエモーショナルに歌い上げるVo.共々走者一掃のクリーン・ヒット・パンク・アルバムになっている。

そんなわけで、ちょっと旧譜もチェックしてみようか・・・と思った次第。




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2012/11/24 / 12:58

中古盤コーナーで音源を見ている時、基本的に何か「お目当ての音源がある」事は殆ど無く、目についたモノが「おっ!これは!」という場合の方がはるかに多い。「これアナログで持ってるけどCDは持っていなかったな」或いは「同じような編集盤は持ってるんだけどジャケは違うし・・・う~ん」という場合も多々ある。昨日手に入れたのはそんな2枚。

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CRO-MAGS "Before The Quarrel" CD

NYHC、CRO-MAGSの名盤1st "Age Of Quarrel" に先立つデモ音源のCD化。自分は昔リリースされていた10インチのアナログ盤を所持しているのだがCDはこれもかなり前に神保町JANISで借りただけになっていた。MP3全盛の昨今だがやはりCDというキチンとした形で音源が手に入るのはとても嬉しい。

内容の方は言わずもがな。個人的にCRO-MAGSはこのデモ音源と1st全曲と2nd の"Crush The Demoniac" "Down, But Not Out" 2曲があれば他は要らないと思っている。そのくらい初期の彼等はカッコ良かったわけで、一般的なイメージとして筋肉&ハゲと言われるマッチョな (表)NYHCシーンにあって、抜きに出てタフなジョン・ジョセフ(Vo)とハーレー・フラナガン(Ba)の肉体から放たれる音の迫力と厚みと圧巻のステージング、そして暴れまくる客の姿には有無を言わせぬ凄味が宿っていた。


このクリップは本当に何度見ても凄い。客の暴れっぷりも半端じゃない。ただ単に加速した盆踊りやってるみたいな「モッシュもどき」とは全く違う。

基本的にランニングなり筋力トレーニングをする時は音楽を聴いているのだが、同じ「肉体派」であってもHenry ROLLINS 絡みの音源は使った事が無いのに対し、CRO-MAGS や AGNOSTIC FRONT といったジョックな連中の音は自然とギアが上がる。何を以て「ハードコア」と言うのかは人それぞれだが、彼等のような音が紛れもなくハードコアであることに間違いない。

もう一枚。

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BLACK MARKET BABY "Baby-Takes"CD

80年代ワシントンDCハードコア。80's 当時は単独音源としてはLP1枚、EP1枚くらいしか出していなかったと思うのだが(90年代に入ってもライヴはやっていたみたいだけどい今はどうなんだろうね・・・)90年代に入って編集盤がいくつか出ており、その中の1枚。自分は2005年にリリースされたDr.STRANGE Rec.盤"Coulda... Shoulda... Woulda"CD を持っており案の定、殆どの曲が重複していたのだが其方は実家に残置されたままになっていたので久しぶりに聞きたくなって手に取った。

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DCのシーンと言うとDISCHORD Rec.に代表される「(速くても)線は細くてエモーショナル」な印象があるが、彼等の音はそれとは一線を画する男気溢れるパンク・ロック。CRIME, FEAR, DICKS 等と並んで根底にあるのがR&Rだということが良く分かる音。

因みに、前出"Coulda..."CD の中ジャケにはメンバーのビフォー&アフターな写真が掲載されている。手元に無いのでアップできないのだが、若い頃のワイルドな見てくれが更に加速して皆、滅茶苦茶カッコいい。

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2012/11/22 / 02:01

先週末の釣果など。

   SatansWrath.jpg
 SATAN'S WRATH "Gallopiny Blasphemy"CD

ギリシャのブラック・スラッシュ・バンド1stアルバム。メタル・ブレイドから出たのがちょっと意外。音は所謂「ブラック・メタル」ではなくかなり正統派・・・というか2枚目までのIRON MAIDEN とPOSSESSED やDEATHROW といった突撃型サタニック・スラッシュを混ぜ合わせ、其処にMERCYFUL FATE のオカルト風味を添えるというかなり強引な力技をやってるのだが、これがバッチリと極まるところがセンスの良さなのだろうな、と思う。初期スラッシャーからNWOBHMファンまで「真正・鋼鉄音」が好きな人にはかなり広範囲にアピールできるのではないだろうか。



一見ダサいジャケだが、シールを剥いで開くとPOSSESSED "Beyond The Gate"LP のような特殊ジャケになってる作りもいい感じ。やはり「オカルト」ってメタルの重要な要素なのだな、と改めて思った次第。

もう一枚。

   Gate brob
BROB / GATE "Split" CD

東京、栃木グランド対決。前者BROBは音源は出ると何気に買い集めていたりする。(確か大昔のカセット音源も持っているような気が・・・)ブラスト・ビートを多用しつつも「1小節の中に幾つ音符を詰め込めるか」という物理的な速さではなく「スピード感」が死なないのがミソ。それでいてダーティなハードコア加減が色濃く残っているのがとてもカッコいい。

後者GATEは聴くのこれが初めて。メタル成分かなり低めのピュア・グラインド。ちょうどASSUCKとDISCORDANCE AXIS をクロスオーヴァーさせてヒネリを加えた感じ。最初、このドラムは絶対マシンに違いないと思っていたのだが、この無機的且つ超絶なブラストを人間が叩き出しているのは驚きだ。此方もBROB同様、スピード感が死なないのが良い。歌詞カードが無いから分からないのだが、曲名が"残虐ノ門" "望ム輪廻" "憎悪ノ涙" という感じで、どんなことを歌っているのか興味が湧く。

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2012/11/19 / 22:43

長らく廃盤になっていた事から中古盤市場でプレミアがついていた

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CORROSION OF CONFORMITY "Eye For An Eye" CD

が待望の再発。

CD化される際に追加収録になった88年リリースの "Six Songs With Mike Singing: 1985" MLP は今回も収録。デジタル・リマスターで旧盤CDと比べて格段の音の良さ。各楽器の輪郭がくっきり浮かび上がると同時に音圧も高くなり漸く21世紀の現代でも鑑賞に堪え得る音に生まれ変わったので旧盤を持っている人でも買い直す価値有り。ただ願わくば今回、82年リリースのオムニバス・カセット"No Core" に収録されていた16曲を入れて欲しかったなぁ・・・と思う。

因みに某アマゾンのレヴューで本作をして「音質もVoもどうでもいい初期の作品がだらだら続く所。最後の6曲だけで後はいらないから。」と偉そうな事を書いているバカな小僧が居るのだが、何を以て「どうでもいい初期の曲」と言ってるのかわからない。コイツの言う「後半6曲」も元はと言えば85年リリースのTHRASHER Mag. のV.A "Wild Riders of Boards"LP用に録られた曲なのだが、どうせそれすら聴いたことが無いのに書いているのだろう。ついでに言えば2枚目"Animocity" 収録の"Mad World" もアレンジは違えども前出82年の"No Core"Tape に収録されてる純然たる「初期の曲」なんだがね。

というわけで現代の彼等のルーツを知りたい方は是非に!

そして次はその「現代の彼等」による待望の5曲入り新作EP。

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おまけにフリー・ダウンロード音源である。これは聴くしかない。サイトは此方から。

1曲目"Feed On" まるっきり CATHEDRAL で笑えるが個人的に、バックの演奏と曲は良いのに肝心のリー・ドリアンの超音痴Vo.のお蔭で全く好きになれなかったCATHEDRALに比べれば遥かに自分好み。2曲目は珍しく速めの曲をやっているが曲調やスピードが変わってもこのバンドの要はディーンのベースとリードのドラムなのだな、と改めて認識する。

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2012/11/19 / 01:54

昨今、書店で新刊書を手に取って思うのは、挿絵と口絵のある文庫本が激減したな、ということである。

表紙にしてもCGだったり抽象的な模様/パターンだったり、漫画ちっくなイラストであったり、あとは有名漫画家に依頼していたり・・・と「挿絵作家」「挿画家」の領域がますます小さくなっているとある種の危機感を感じているのは自分だけではなかろう。

     DSC_0931.jpg

神保町「東京堂書店」6階の東京堂ホールで開催中だった「粋美挿画展2012」の最終日に行ってきた。

因みに、神保町は毎週のように本を買いに行っているのだがこの展示が開催されている事は金曜の夜になって漸くツイッターで知った、という体たらく。展示されている作品のテーマは週代わりになっており、最終週は時代小説。因みにこれまでのテーマは乗り物、ミリタリー、ミステリと聞き「毎週見に来ていればよかった!」と思ったものの後の祭り。

会場内、入って最初に展示されている堂昌一先生の作品群、圧巻である。以前、光文社文庫版「半七捕物帳」を読んだことのある人であればその情緒溢れる表紙絵に魅了された方も多いのではなかろうか。森村誠一「新撰組」は未読であったのだが、展示されている挿画を見ていると小説自体も読みたくなってくる。

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良い作品と良い挿絵が一体化した時の相乗効果というのは本当に素晴らしいものである。例えば、これは以前にも書いた話だが、エドガー・R・バローズの古典SF「火星シリーズ」における武部本一郎画伯の表紙・挿絵・口絵、特に第一巻「火星のプリンセス」の表紙に描かれたヒロイン、デジャー・ソリスの姿にメロメロになり日本における「バローズ作品」のイメージを完全に魂の奥底に、いやDNAレベルで刷り込まれてしまったSFファンが如何に多かったか、ということを考えれば作品と挿絵の関係は或る意味、その人の人生さえ左右しかねないほど大切なのだな、と改めて思う。

その反面、現在、創元推理文庫で刊行中・・・だが此処3年余り絶賛休止中・・・の真正「コナン」全集の表紙のように、誰が見ても朝青竜にしか見えない「コナン・ザ・バーバリアン」といった明らかに作品とは似ても似つかない絵を添えられた日には、齢30の若さで自殺した作者のハワードも草葉の陰で鼻水滴らせながら泣きじゃくっている事だろう。

そんなわけで今回の作品展、楽しい時間を過ごすことが出来た。堂昌一先生の作品と共に、星恵美子先生の手による艶っぽい遊女や女忍の姿、表情も印象に残った。

因みに展示を見た後、書店内を物色していたのだが東京堂、改装以後は各ジャンルごとに好事家の食指をそそる品を取揃え、魔窟度数大幅アップ。自分のように雑食性の人間にとっては欲しい本が多すぎて目移りしてしまう。取り敢えず、山本タカト画集「ネクロ・ファンタスマゴリア」は欲しいなぁ・・・と思ったり。

アマゾンを始めとしてオンラインショップ全盛の昨今、加えて出版業界も売れ行き不振で本を読む人口自体の激減が叫ばれる時代にあってやはり自分は「書店で本を探す」楽しみは絶対に放棄したくないと思う。自分にとって「読書」という行為は「本を探しに行く」ところから始まっているのだから。

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2012/11/18 / 10:26

土砂降りの雨の中、大久保EARTHDOM で開催された

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  「闇黒の密儀night of the doomed ones vol.1」

に行ってきた。

出演は、

ANATOMIA
ALBIORIX REQUIEM
FUNERAL MOTH


の3バンド。お目当てはANATOMIA で「当然、トリで出るだろう」と思っていたのだが予想外の1番手。いつものように20時近くなってから入っていたら見逃していた。頻繁にライヴをやらないバンドだけに、数年ぶりに見ることが出来て本当に良かった。

彼等のライヴを見たり音源を聴いていて思うのが、「フューネラル・ドゥーム」「ドゥーム」というジャンルが確立されてから、それをやり始めたバンドとは違い、飽くまでも「ヘヴィ・メタル~スラッシュ・メタルを経てデス・メタルに至り、其処からスピードを遅くしていった」事で、その辺が昨今巷に溢れる「スローな」バンドとは完全に一線を画する理由なのだろうと思う。そう、「ドゥーム」でなく飽くまでも「デス・メタル」な音と曲の質感が堪らなくカッコいい。

尚、昨夜は3バンドということで約1時間にわたってたっぷりとライヴを楽しむことが出来た。感謝。

   Anatomia Tshirt
ANATOMIA の新Tシャツ

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Nuclear War Now! 今年の "Live Ritual Volume 3" フェスT。ダサダサだった初回のシャツと比べて雲泥のカッコよさ。やはりクリス・モイエン画伯が手掛けると違う。出演者もかなりイイ線行ってる。BLASPHEMY, PROCLAMATON, REVENGE って凄すぎ。



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2012/11/17 / 02:31

11月も半ばを過ぎてしまった。

今年もあと1か月半で御仕舞だ。外を歩いていると、もう晩秋ではなく初冬である事に気付く。空気が冷たくなった。明け方、寒さで目が覚める。もうそろそろ暖かい毛布と熱いクラムチャウダーが恋しくなる時期に来ている。


突然だが、「怪談」は絶対、夏よりも冬の方が怖く感じる。大体、東京の夏の平均気温がタイやインドの年間平均気温を超えてしまうようなキチガイじみた夏の東京、うだるような熱帯夜は怪談よりアイスノン枕の方が遥かに涼しくなる。個人的に、寒くて暗い冬の夜の方が、怪談は怖いに決まっているだろう。冬は、魔物が跳梁跋扈する季節なのだ。

というわけで、ちびちびと読み進めていた

DSC_0925.jpg
    岡本綺堂 「三浦老人昔話」、「青蛙堂鬼談」

読了。

前者、名作「半七捕物帳」にも登場する三浦老人が語る昔話。

「半七」が探偵小説の体裁を持つ作品であるのとは対象に此方は奇談。ただし「半七」にも怪談風味の作品があるように語り手が変わればどちらでも使えるネタなのではないか、とも思う。ドナルド・E・ウェストレイクが「成功した犯罪は『悪党パーカー』、失敗した犯罪は『ドートマンダー』」と分けているのと似ているかもしれないが、飽くまでも「スピンオフ」という感じである。

後者、「青蛙堂」(これで「せいあどう」と読む)は百物語形式で一所に集まった男女12人が披露する怪談。

怪異の源は目隠しをされた猿の面や代々伝えられてきた笛、といった「物」に纏わるもの、馬や蛙、蟹や蛇といった「動物」に纏わるもの、そして「人」に纏わるものという3パターンあるのだが、その中でも「蛇精」「一本足の女」の2作はお気に入りである。

前者、人ならざる力を秘めた蟒蛇(うわばみ)狩りの男、後者、大層な美形であるにもかかわらず脚が一本しかない片輪者の少女の話である。巨大な蟒蛇と対峙してこれを殺す事を生業とする男や、色欲で男を虜にしては夜な夜な辻斬りをさせ、その返り血や刀身にこびりついた血液を啜る異形の美女は何処となく、半神半人のダークヒーローやジョン・ジェイクス「戦士ブラク」に出て来る吸血双生児、或いはC.L.ムーア「ノースウェスト・スミス」のシャンブロウに通じる生臭さとエロティックさを併せ持っているようにも思える。

これからの寒い冬の夜、毛布にくるまりながらこのようなオールドスクールな「怪談」の余韻に浸るのも、血飛沫飛び散るスプラッター映画とはまた違った恐怖の楽しみであるのかもしれない。

加えてこの2作品、表紙と口絵を飾る、山本タカト氏のイラストが大変素晴らしい。


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2012/11/14 / 00:31

一般に「ハードボイルド物」と言われる小説は大好きだが、再読したくなるブツには殆どお目に掛からない。これまで再読した作品は、ミッキー・スピレイン「裁くのは俺だ」、そしてハメットの作品だけである。

そんなわけで、

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    ダシール・ハメット「ガラスの鍵」

読了。

自分はつい最近までこの作品の新訳版が出版されていたことを全く知らなかった。

本書については既に、創元推理文庫版(大久保康雄 訳)とハヤカワ文庫版(小鷹信光 訳)の2種類の翻訳で読んでいたが、今回の訳本が一番、読みやすかった。アマゾンのレヴューを見ると「読みやすくて戸惑う」だの「非情さに欠ける」だのという意見が挙げられているが、偉そうな事を言う割にお前等、原書を精読出来ないんだろ、と思う。

今回の訳本で主人公の名前は「ネッド・ボーモント」と書かれているが、ハヤカワ版で翻訳を担当された小鷹さんも「Ned Beaumontの "t" は完全なサイレントと断言できない。」と書いているわけで「ボーモント」という訳だってありなのだと思う。「ノー・カントリー」に出て来る殺し屋の名を「アントン・シュガー」とするか「アントン・シガー」とするかの違いと同じで、元々言語体系の違う言葉を正確に訳すことは困難を極める。結局、そういうところに噛みつく連中は、ハードボイルドは「文学的で読みにくい訳文」でなければならず、「その文体に浸れる俺って知的」とでも思っているのだろう。

というわけで、本書。

粗筋は・・・

賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕・マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す

・・・というもの。

簡単に言えば、政治家を巻き込んで利権の拡大を図るヤクザ者の相棒である博徒の話である。腕力と拳銃にモノを言わせるタフガイ探偵でもなんでもない、敵対する組織に捕まってタコ殴りされた上、自殺まで図ってしまう男が主人公である。共感できる部分など、殆ど無い。ただこのボーモントというヤツ、非常に知的且つ冷徹である。その知力を武器に真相に迫っていく根性は称賛に値する。

自分がハメットの作品に惹かれる理由は、コンティネンタル・オプにしろ、サム・スペードにしろ、ネッド・ボーモントにしろ一応の職業的倫理観は持っているものの、基本的には自分のエゴと損得勘定で動く事を露骨に示している点である。スペードは映画版のハンフリー・ボガートが余りにカッコ良すぎるせいか良いイメージで語られることが多いが、原作を読んでみればかなり下卑た利己的な男だということが分かる筈。

ボーモントにしても例え家族ぐるみの付き合いをしている親友のマドヴィッグであろうと、己の意志と行動規範から外れた行いをすれば容赦なく切って捨てるところも凄く良い。

フィリップ・マーロウのように2度か3度、酒を酌み交わしただけの男を「親友」呼ばわりして、自分の思い込みでしかない「友情」とやらのために行動するような気取った奴とは次元を異にするギラギラした人間の本性が、感情を排した文体で淡々と綴られている。だからこそ、堪らなく面白い。

チャンドラーの「卑しい街を行く騎士」たる私立探偵なんかクソ食らえ、と思う。マイク・ハマーもハメットの主人公たちも「己のエゴ」に正直に生きているからこそ魅力なのだ。だから時として、無性に読み返したくなる。初手から、解説にあるように「ボーモントが口髭を親指の爪で梳く仕草の違い」が心理描写に繋がっている、という小難しい事は考えなくともいい。純粋に、物語を楽しめばいいのだと思う。

因みに本作を映画化した場合、ネッド・ボーモント役はジョニー・デップ以外思いつかないのだけど・・・どうだろう。マドヴィッグは昔だったらロバート・レッドフォードと答えただろうが、レッドフォードはウェストレイク(リチャード・スターク)の「ドートマンダー」だからな・・・現代で探すと、誰がいいかね。ブラッド・ピット・・・うん、いいけど・・・定番すぎてねぇ・・・

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